ニシト:コーヒーって今本当にお店が増えてきて、コーヒー屋さん増えてると思うんですど、神永さんはこの業界に入られて十四年目ということですが、そもそも何でこのコーヒーという世界に入ろうと思われたんですか? 

神永さん:コーヒーの世界じゃなくても僕は何でも良くて、自分で商売をしてみたいっていうところがスタートだったんです。

ニシト:商売って幅広いですよね。その中からなぜ喫茶店なのかコーヒーなのか、この世界に?

神永さん:たまたま先代のやってるダンアロマに出会って、何度か来てる中で先代が店を辞めるって言った時に自分が店をやってみたいって言って、全部買い取りました。

ニシト:じゃ完全にお客さんでいらっしゃって、先代の久光さんと一緒に働いてたわけではないんですか?

神永さん:ないです、だからたまたまなんです。やりたいですって言って。

ニシト:そしたら先代は何とおっしゃったんですか?

神永さん:この店をやりたい引き継ぎたいっていう人たちはいたんですけど…僕に来ました(笑)

ニシト:オーディションはあったんですか面接は?

神永さん:ないですね。僕がサラリーマンでUCCにいてコーヒーの仕事は一応してたんですけど、でもコーヒーの知識なんて全部ここで培ったものだと思うので。

ニシト:そうなんだ、じゃあそのUCCで会社員をやってらっしゃった時からいつか自分でお店をやりたいって思いをお持ちだったんですか?

神永さん:そうですね。

ニシト:たまたまその先代が辞めるってことになって、教えてもらった期間ってどれくらあったんですか?

神永さん:先代が年末にお店を閉めて引き継いだのが二月五日なんですけど、その間で一ヶ月ぐらいの間にひたすら落としまくったっていう。だからもう慣れるしかないってのは、落としまくるしかないです。

ニシト:一ヶ月ですか?私コーヒーの世界のこと全然詳しくないですけど、そんな一か月でコーヒーのお店をやれるぐらいの技量って身につくもんなんですか?

神永さん:身につかないです(笑)

今では十年やってきて、先代の久光さんを知ってる方より僕が立ってる姿を見てるお客さんの方が多いですけど、初めた当初はやっぱり先代の姿を見てるお客さん、味を知ってるお客さんが多かったので…もう厳しい言葉をたくさん言われました。

ニシト:ですよね。

神永さん:ゼロから始める商売と引き継ぐ商売って全然スタートラインが違うしどっちも大変だとは思うんですけど、引き継ぐ大変さはすごく身に沁みて感じました。

先代と比べないでくれとも言えないじゃないですか、こっちもそれでお金をいただき商売をしてるわけだから。

ニシト:結構厳しい時期ありましたね。そこから常連さんに認めていただけるようになるまでってどれぐらいかかったんですか?

神永さん:どうなんですかね、もう忘れましたけど…一年ぐらいかな。

ニシト:去って行ったお客さんがやっぱりいらっしゃったんじゃないですか?

神永さん:いらっしゃったと思います。

でもその中でも嬉しかったのは、一度去って行ったんですけど二年ぶりとかに来てくださった方が飲んだ時に、味が戻ってるって思ってくれたみたいで今でも来てくださります。

ニシト:それは嬉しいですね。

神永さん:最高にもう感激した言葉でしたね。

ニシト:そうなんですね。

コーヒー屋さんとか喫茶店やカフェって今すごい一杯あると思うんですけど、それぞれ特徴があるじゃないですか。

こちらってどんなお店にしたいなって思いでやってらっしゃるんですか?

神永さん:アキコさんがおっしゃったコーヒーの遊園地ですね、コーヒーって面白いねって思ってもらえる店にしたい。

いい意味で緊張感を持ってもらえる店でありたいですかね、なんか居心地はいいんだけど他のお客さんには迷惑はもちろんかけないし固くなりすぎない。

いい緊張感でこのいい空間を僕たちが作っていくお店ではあるかなと思いますよね。

一人で来てゆっくり本を読みたい人もいます、でも友達と来て会話をしたい人たちもいます。

はたまた一人でいらしたけど僕らと話したいお客さんもいたりするけど、みんな違う空間を求めて来てるんだけど…。

ニシト:そこにお互いに気遣いがあるっていう感じですかね。

喫茶店に入って知らないお客さんと話すことってそんなにしょっちゅうはないと思うんですけど、私こちらに来ると大体毎回どなたかと喋ってるんですよね、そういうことが自然と生まれる気配があると言うか…。

私お酒はいただかないんですけど、そういう意味ではバーに遊びに来たような感覚を楽しめるのって本当に嬉しいなと思いますね。

神永さん:もうここってこういう空間なので僕たちからすると来てくださる方がお客様っていうだけであって会社の社長だろうが平社員だろうがみんな関係ないわけですよね。

そこで社長が、会社では聞けないけど若い人の意見を聞きたいなっていう時に僕とかの意見を聞いてくれたりとか。

入ってまだ二、三年目とかいう個人的にも話したりするようなお客さんがいれば、いきなり関係を繋いじゃったりするので。

ニシト:そういうこともされるんですか?

神永さん:しちゃいます、役員の人だとか中間管理職の人が色々いらっしゃいますけど、自分の部下には話せないことでも全く関係ない僕だったりとか、ここのお客さんで知り合った若い人間とは会話ができたりとか。

年配の方と若い人が出会えるこういう空間っていうのも、すごく僕は素敵だなと思っているので繋がりを大切にしたいですね。

ニシト:そうですね、すごいそれって素敵だな。こちらのお店が好きな理由が自分の中でもよりはっきりしたような感じですね。山口さんはこちらのお店に入られて何年目でしたっけ?

山口さん:まだ二年目ぐらいですね。

ニシト:元々会社員でいらっしゃったんですよね、なんで会社員を辞めてこちらの仕事を手伝おうと思われたんですか?

山口さん:本当の経緯を話しますと、マスターがうちに遊びに来たんですね。その時に仕事の話になりまして一緒にやろうということになりました。

ニシト:サラッとおっしゃいましたけど(笑)

山口さん:本当にそうなんですよ、元々彼と仕事をやってみたかったんですよね、何事もタイミングなんですよね。マスターが先代から受け継いだ、それもタイミングだし。自分とマスターが一緒に仕事したのもタイミングだと思ってるんでそれに尽きます。

でも、そっからもうトントン拍子で三ヶ月後には働いてたんじゃないですか。

ニシト:会社員時代とは随分と生活が変わられたんじゃないですか?

山口さん:そうですけど、ただまぁ毎日が楽しいんでね。

ニシト:どんなところに楽しいなって感じられますか?

山口さん:好きな人とやってるしお客さんと話すのも好きだし、今だったら豆焼くのも好きだしコーヒー入れるのも好きだしっていうね。全てに感謝してますよ。

ニシト:すごい幸せじゃないですか。

コロナの時代になって、会社にある意味頼ってた人もこのまま会社に本当に頼ってていいのかと、なんか自分としてできることを身につけなきゃいけないんじゃないかなんていう声を周りからちらほら聞くんですね。

でも会社員をやっぱり辞めて、会社員てある種守られてるじゃないですか。そこから辞めて自分でやるっていうのは、喜びも大きい反面もちろん大変なこともあると思うんですよね。その辺りを二人はどう感じてらっしゃいますか?

神永さん:楽しいことしかないですね。もちろん、楽しいだけではやってられないですけど、コロナの状況でお客さんが減りますとか、いつになったら元の営業に戻せんだろうとかいろんな思うことはありますけど、その時にできるベストなことをやり続けるだけで…。

山口とも話をしたりしましたけど、仲間のためもそうだし自分のためになるし来てくださるお客様のためになんか最善なことができてったらいいなって思ってはいますよね。

ニシト:喧嘩することありますか、お二人は?

お二人:ないですね。

山口さん:お互いがもう本当にわかってるんでね、阿吽の呼吸じゃないですけど大体はわかりますので。

ニシト:夫婦のように見えてきました(笑)

すごい素敵だと思うんですよね、本当に自分がやってる仕事が大好きで楽しんでやってらっしゃるって。

その自分の好きっていうのを見つけるっていうことに結構悩んでる方も多くいると思うんですけど。今山口さんからタイミングだったっていうお話でしたけど、なぜそんな自分はこうやって好きだと思う職業に出会えたんだなと思いますか?

山口さん:ごくわずかですよね、僕らみたいな好きな仕事で生きてる人っていうのは。

神永さん:でもそれって僕の考えとしては好きなものをやってるんじゃなくて、やってたことが好きになっていくだけなので。

山口さん:きっかけが違うんですよね、考え方と言いますか。

神永さん:私これが好きだからやってみようってやってみたら続かない事だってあるだろうけど、自分よくわかんないけどやってみたらそれがどんどん好きになって、それを好きな仲間とできたらより好きになってそれがいい輪で広がっていけば最高ですよねって思います。

山口さん:僕は仲間から入りましたね。彼と一緒にやりたいからこの仕事したけど、この仕事がもう好きになりました。順番の違いですね、彼とは。

神永さん:自分コーヒーとかこういうカップとか音楽とか何の知識もなかったけど、人が好きでこの店を初めてやっていく内にコーヒーもどんどん好きになって、より美味しいものってやっていくのが楽しかったし、こういうカップと出会ったことによって行ったこともないテーブルウェア展とか行ってみたりしてもまた新しい刺激をもらえるし。

ニシト:なんか人が好きそして仲間が好きっていうところから始まって、その状況において起こっていったことを全部好きになっていったっていうそういう感じなんですね。

神永さん:ですかね、だから僕はこれがコーヒー屋じゃなくて、仮にここタピオカ屋さんでも僕どんどんタピオカ好きになっていくと思います。

ニシト:そうですか、コーヒーが好きだからこちらの店をやり始めたんじゃなくて、人が好きで商売をやりたくてたまたまご縁で出会ったのがコーヒー屋さんだった。

じゃあこれが洋食屋さんだったかもしんないし、お洋服屋さんだったかもしんないし、でも最初に明確だったのは人が好きだっていうことははっきりしてたわけですか。

神永さん:僕はそこが、人と接する仕事をしたいっていうのが根本にあるっていうだけなんで。どこで人と繋がるかっていうのがコーヒーなのか洋服なのか何なのかわかんないですけど、そこに人がいるからできる。

ニシト:すごいなと思うのは、自分がやっている仕事のある意味根っこの部分じゃないですか、仕事って手段だと思うんですよね。

私よく例に出すんですけどシャネルはデザイナーじゃないですか。

でも彼女がきっとやりたかった事って女性の解放だと思うんですね。コルセットでギュッて締め付けられてた女性たちを洋服というもので解放することによって、女性の意識を解放してったんだと思うんですよ。

なぜ彼女がお洋服という手段を取ったかって言うと、孤児院にいた時にお針子やってたからなんですよね。だけど彼女がやりたかったのはデザインという手段を使った女性の意識の解放だったんじゃないかと思っていて。

人が好きで人に喜んで欲しいっていうのは根っこの部分じゃないですか、シャネルで言うと女性の意識を解放したい、コーヒー屋さんは手段。

どっちかって言うと好きなことをやって生きていきたいっていう時って手段の方を探していて、だけど本当はその根っこにある何が好きかっていうところ、そっちを見つけたらどんな手段だろうがたぶんお二人のように仕事をやってくことを楽しんでいけるのかなって今思いました。

神永さん:そうかもしれないです、それしかないんじゃないかなと。

ニシト:と思うとですよ、次の疑問は何でその好きを最初にそんな見つけられたのかっていうことですよね。だってそこがやっぱりみんな見つけられないじゃないですか。

それってある種仕事をやってる意義・意味だったりすると思うんですよね。

神永さん:それはもう本当重たい話になるかもだけど、僕は中学か高校の時にもう死にたくて死にたくてしょうがない時期にずっとグチ聞いてくれてたのが山口なんですね。

その時に支えてくれたのがやっぱり母親だったり両親だったりみたいのがあったんで、なんかもうマイナス思考からいきなりプラス思考にぶっ飛んだので。

周りの人のいろんな影響があって、急に元気になったと言うかなんか変わんなきゃって思って、行動が変わったらやっぱり一緒に来る人たちも変わって。

高校生の時本当は禁止なのをアルバイト初めてみたらすごく楽しくて。

僕がコンビニでアルバイトしてるところであまりに人がいなくなって、夜勤で山口が入って来てくれてそのままそこのコンビニで社員なってくれてとか、一緒に仕事を学生時代にしてたのもあって彼の仕事ぶりや人間性からも一緒にいつかなんか商売できたらなとは思ったのが今の形になったっていう。

ニシト:もう私なんか涙が出そうですよ。

神永さん:だから僕は本当に自分自分ってよりは、そんだけ助けてくれる人たちがたくさんいたし今でもそうだし、独りよがりじゃなく自分が何ができるか。

自分がこうなりたいとかっていう欲望ももちろんあるけども、疲れた人がコーヒー飲みに来てここに来て良かったって帰ってくれるのが嬉しいし、嬉しいことがあって来てくれて最後の締めここに来て良かったって思ってくれるのが嬉しいし。

ニシト:そんなお店に出会えて幸せですよ、コーヒー遊園地。

神永さん:ダンアロマっていいよねって言われるお店であって欲しいなって、そういうサービスができる人間でありたいな。

ニシト:なぜこちらがコーヒー遊園地なのかがなんかすごいわかった気がします。

今日は東急東横線都立大学駅にありますカフェダンアロマの店主の神永さん、そして中学時代からの大親友でありご夫婦のような同志の山口さんにお話をお伺いしました。

どうもありがとうございました。

お二人:ありがとうございました。

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